当院へのご紹介
当院へのご紹介
【歯科】インプラントメンテナンスの継続(引継)のご依頼
インプラントシステムは数多く存在しているため、各種システムごとに対応できる医院を探すことが困難な場合もあります。当方は大学勤務時代から今まで多くのインプラントシステムに対応してきた経験があり、以下のご依頼に対応可能です。
また他院にて施術されているインプラントに対する治療が難しい場合などもご相談ください。
▼ご紹介について
事前にフォーム(お問い合わせ)からご連絡いただけるとスムーズに対応させていただけます。
その際に以下の項目がお分かりになるようでしたらご記載ください。
①インプラントシステム ②上部構造/アバットメントの種類・固定方法 ③アバットメントの最終締結トルク
また治療の引継ぎに際しての注意点などございましたら併せてお知らせください。
インプラントメンテナンス等の費用について
以下、当院での術後処置に関する費用の目安です
・インプラントメンテナンス(PMTC含む)¥6,600~13,200
・インプラント周囲炎外科処置 ¥55,000~82,500/1インプラント
その他費用は料金表をご覧ください。
インプラント治療におけるメンテナンスの重要性
歯科治療の主体は、大きく2つに分けられます。「動的治療」と「メンテナンス」です。
「動的治療(Active Therapy)」とは、むし歯を削って詰めるとか、炎症の原因となっている歯を抜歯するといった、病気やその原因に対する治療を意味します。一方で「メンテナンス(maintenance)」とは、動的治療によって健康を取り戻した状態を維持していく治療という意味です。歯周炎のような慢性疾患をもつ患者さんは長期的な加療やフォローアップが必要になってくるため、メンテナンスが治療として特に重要な位置を占めるものがあります。インプラントもまた長期の使用を前提としていますので、同様にメンテナンスが重要になってきます。
「メンテナンス」は動的治療の評価(Assessment)と、健康な状態を維持するための支持療法(Supportive Therapy)を内包しています。これらを繰り返し行うことで、治療部位の安定と悪化した場合の早期発見・早期治療を可能にします。
「インプラント治療におけるメンテナンスの目的」 (日本歯科医学会 インプラント治療指針より抜粋)
①インプラントとその周囲組織を口腔内で長期に安定して機能させる
②インプラント周囲粘膜炎および周囲炎の早期発見・早期治療
③インプラント以外の口腔内の疾患や症状の早期発見・早期治療
インプラント治療後にどのような不具合があるの?
インプラント治療後に起こるトラブル(不具合・合併症)については、いくつかの調査があります。これらの結果から「機械的合併症」「生物学的合併症」「外科術後に起こる合併症」の3つに分けられます。このうちインプラント治療が無事に終わったあと、時間とともに起こりうる可能性があるのは
「機械的合併症」…主にインプラントや上部構造体(歯のクラウンの部分)の破損
「生物学的合併症」…インプラント周囲疾患といった、インプラントの歯周病的な問題
調査によると、この二つの発生頻度は60%程と比較的高いことが分かります。
近代のインプラント治療は1980年代から始まり、今では多くの患者さんの治療に使われています。そしてインプラントの長期経過を調査した研究からいろいろな事がが判ってきました。その一つの問題がこの生物学的合併症であるインプラント周囲疾患です。
インプラント周囲疾患について
インプラント周囲疾患とは、インプラントにおける”歯周病”です。
厳密にはインプラントと歯は異なるので、インプラント特有の問題(インプラントのネジ部分の形態や表面性状、手術時の埋入方法)や炎症を起こす原因となる菌群の違い、病状の進行速度など違いは多くあります。
しかしインプラントを人工の”歯”と考えると、インプラント周囲疾患と歯周疾患には似ている部分も多くあり、実際の治療の場においても歯周疾患の治療に準じて診査や治療を行うことになります。そのため本稿では、インプラント周囲疾患と歯周疾患を比較して説明していきたいと思います。
インプラント周囲疾患には、二つの病態があります。「インプラント周囲粘膜炎」と「インプラント周囲炎」です。
まずインプラント周囲の炎症の診査では、プロービングという方法で、インプラント周囲の出血の有無(BOP ;Bleeding on robing)を確認します。「出血がある」=「炎症がある」という診断です。これは歯と同様です。
「インプラント周囲粘膜炎 ; Peri-implant mucositis」はインプラント周囲の粘膜に限局した炎症です。歯でいえば「歯肉炎」に相当します。プラーク性の歯肉炎は適切なブラッシングを行うことで炎症は消退します。インプラント周囲粘膜炎もプラークによる炎症の場合、ブラッシングが行き届けば健康な状態に改善できます。適切なメンテナンスによって治癒が見込まれる可逆性の炎症疾患です。
「インプラント周囲炎 ;Peri-implantitis」はさらに歯槽骨の破壊を伴う炎症性病変です。インプラントを支えている歯槽骨に炎症が波及している状態ですので、レントゲン検査を行って、歯槽骨の状態を観察し診断します。これは歯でいえば「歯周炎」に相当します。炎症によって破壊された歯槽骨の状態は、レントゲンによる診査や、プロービングデプスといわれる数値(歯でいう歯周ポケットの深さ)によって進行度を診査していきます。軽度の骨破壊であれば維持療法を行いますが、重度に骨破壊が進行した場合はインプラントを除去することになります。これらも歯周炎の進行とその治療方法に類似したものになります。
インプラント周囲疾患の発症率は本当に高いのか?
インプラント周囲疾患の発症率については、さまざまな報告がありますが、約80%の患者さんにインプラント周囲粘膜炎を、11~28%の患者さんにインプラント周囲炎を認め、またインプラントを使い始めて(平均機能期間)10年の経過で5人に1人がインプラント周囲炎を発症していると考えられています。
[参考データ]
Fransson C, et al. Prevalence of subjects with progressive bone loss at implants. Clin Oral Implants Res. 2005
Roos-Jansåker AM J et al. Nine- to fourteen-year follow-up of implant treatment. Part I: implant loss and associations to various factors. Clin Periodontol. 2006
歯周疾患(歯周病)と比べると?
歯周疾患には「歯肉炎」と「歯周炎」があります。どちらも歯の周囲組織への炎症疾患です。炎症の有無は、歯周組織検査(プロービング)時に歯肉からの出血を認めることで診断されます。
「歯肉炎」は歯肉に限局した可逆的な炎症で、プラーク(細菌)由来の歯肉炎が最も多くを占めます。
「歯周炎」は、歯肉と歯を支える歯槽骨へ広がった非可逆的な炎症です。骨吸収を伴うため、進行すれば歯の動揺が起こります。診断には歯周組織検査とレントゲン診査が必要ですが、出血を伴い歯周ポケットが4㎜以上あれば歯周炎の疑いが高いです。
上に示した厚生労働省が実施する歯周疾患実態調査(平成23年度)の結果をみると、出血なし(Code-0)の人の割合を全体から差し引くと、全年齢層で80%の人が歯周疾患に罹患していることがわかります。歯周炎の可能性がある人(Code-3、Code-4)の割合は、55歳以上で50%近くいることになります。なお歯周疾患(歯周炎)は45歳以上の抜歯原因の第1位です。 →「原因別に見た抜歯と年齢の関係」
周囲粘膜(歯肉)に限局する炎症病変である「インプラント周囲粘膜炎」も「歯肉炎」もプラーク(細菌)性の炎症病変です。どちらの病変も成人では80%近くに認められますが、適切なプラークコントロール(ご自身によるブラッシングやフロッシング)により2週間程度で出血は止まり、見た目も引き締まった粘膜(歯肉)に治癒していきます。継続的なプラークコントロール下にあれば、一過性の病態と考えてもいいでしょう。
一方で歯槽骨の破壊を伴う炎症である「インプラント周囲炎」や「歯周炎」は、炎症の進行状態によってはインプラント除去や抜歯が必要になるケースもあります。インプラントの場合、重度のインプラント周囲炎(Class III,出血排膿を認めポケット深さ5mm以上、支持組織が50%以上喪失)、歯の場合、辺縁性重度歯周炎(支持組織が50%以上喪失、ポケット深さ6mm以上)の多くは治療のために外科処置を行うことになります。この前段階までステージであれば、非外科治療(歯肉の切開や骨を削る治療をしない)での改善が期待できます。
インプラント周囲炎の割合は検査方法や統計方法で変わりますが、インプラント患者さんの11~28%に認められると報告されています。歯周炎の発症が55歳以上の人に50%近く認められていることを考えると、少し低い数値のように感じるかもしれません。しかしながらインプラントとその周囲組織は天然歯のものよりも解剖学的・組織学的にみると脆弱な部分があり、それが炎症の進行に影響している可能性も指摘されています。
インプラント周囲疾患も歯周疾患も予防できるものがほとんどです。ですのでインプラント治療によって補綴治療(歯を作る治療)が終わっても、継続的なメンテナンスを受けられることがとても重要になります。